Antwerp: a unique point of view on fashion design
1963年の設立以来、アントワープ王立芸術アカデミーのファッション学部では、
ファッションデザイン学習の分野に於いて、同地に根付く卓越した伝統と深く革
新的なアプローチに取り組んできた。1980年代に出現した“アントワープ・シック
ス”は、マルタン・マルジェラら同学部の卒業生から成る急進派デザイナー集団
で、新しく創造的で全く真逆のアプローチから生み出される彼らのデザインは、
当時のファッション界に大旋風を巻き起こした。これにより、同学部の名声は世
界中に知れ渡る所となり、今日に至るまで、ファッション震源地としての確固たる
地位を得るに至ったのである。
同アカデミーは、アントワープの中心に位置するファッションとMoMu(アント
ワープファッション博物館)を管轄とするFlanders DC(フランダース地方の政府
系非営利団体)と同じ建物内に居を構え、毎年、その場所で世界的にも有名な
グラジュエーションショーを開催している。その規模は大きく、世界中から6,000
人以上の観客が集い、ファッションと新たな試みを祝う祭典となっている。ドリ
ス・ヴァン・ノッテン、マルタン・マルジェラ、ダーク・ビッケンバーグ、ピーター・
ピロット、アン・ドゥムルメステール、ダーク・ヴァン・セーヌ、ヴェロニク・ブラン
キーノ、A. F.ヴァンデヴォルストといった錚々たる面々は、全員が同ファッション
学部の卒業生であり、彼らのデザインは、同アカデミーの独創的なビジョンを見
事なまでに表現している。際限のないコンセプチュアルな創造性と独自の表現
は、教育プログラムの重要な焦点であり、それに魅せられた若い才能が世界中か
ら集まって来る。学生たちは、このアカデミーで個々の限界を押し上げ、自らの
持つ能力、夢、アイデアを最大限に引き出す術を学んでいる。実際に、異なる経
歴、多種多様な文化や意見を持つ国際色豊かな交流は非常に魅力的であり、
結果として同アカデミーとアントワープという都市の強力な推進力となっているの
である。
4 年に渡る修業期間の最初の2年間で、学生は同アカデミーがファッションデザ
インの習得に於いて本質だと考える、デザイン、グラフィック、テーラリング、テキ
スタイル、美術史、哲学、心理学に関連する基礎課程を学ぶ。3年目に入ると、
これらの基礎を発展させ、ある特定文化の予備研究に基づきデザインされた、
独自のシルエットコレクションの提出を求められる。最終学年では、時間の殆ど
を費やし、それまで学んだスキルの全てを総括し発展させた、少なくとも12のシ
ルエットから構成される最終コレクションを完成させなくてはならない。完成し
たコレクションは、アヴァンギャルドファッションという名のもと、概念論と実験の
真の祝宴である、国際的にも評価の高いグラジュエーションショーの期間中、展
示されるのである。