Khadi
A journey through the past to help us shape our future.
by Stefano Aldighieri
少し前、ニューヨークのキングピンズショーを訪れていた時、珍しい生地に私は目を奪われました。Khadi Denim。それは、何世紀も昔の機器と技術を使い開発された“新しい”生地でした。紡績から染色、織りまで全てを手作業で、何千年も前から伝わる伝統的な手法に従い、手織り機によって織られた生地だったのです。
インディゴは、織物の染色や捺染に使われてきた最も古い染料の1つであり、インド、中国、日本などのアジア諸国で何世紀にも渡り使用されて来ました。
インドは、旧世界に於いて藍染めの中心地であったと信じられており、グレコ・ローマン時代には、すでにヨーローッパ向け藍染織物の主要供給国となっていたのです。
カディ(Khadi)とは、インド、バングラデシュ、パキスタンで手紡ぎ手織りの布地に対して使われる用語であり、それらは主に綿織物です。インドでは、しかしながら、カディは単なる布地ではなく、モーハンダース・カラムチャンド・ガンディーにより始まった、インド独立運動の発端ともなったのです。
ガンディーは、農村の個人事業主とインドの自立の為(イギリスで工業的に製造される布地の代わりに)、カディ糸の紡績を促進し始めました。こうして、カディは、1920年代にはスワデーシー運動に於ける象徴となり、不可欠な要素となりました。そして、この自由闘争は、カディの布地を使用する事と外国製の衣類の投棄を中心に展開していったのです。
私は、インドのグジャラート州を旅し、カディの製造工程を見て回り、写真に撮って記録文書として残しました。化学薬品や電力は不使用、ハイテク技術とも無縁、資源の枯渇の心配も無用なカディは、恐らく唯一の真の持続可能な製品であると言えるでしょう。カディに必要なのは、非常にシンプルな機器のみで、事実上どこででも生産可能です。
であるとすれば、カディは現代の悪夢のような環境への解決策なのでしょうか?もちろん、私たちが毎日のように見たり、製作したり、購入している、何百万ヤードもの糸を用い生産されているデニムに取って代わるには、現実的には無理があります。カディは大量生産にも向いていなければ、営利面から見ても実現は難しいからです。
しかしながら、重要であるのは、どうして、またどのようにして、カディが現代まで生き残る事が出来たのかを理解する事です。カディの真価を認め、あるいはそれを、私たちの日常生活に生かしていく事が、大切なのです。(ステファノ・アルディギエーリ)